2013/02/23

クラウドは世界的現象 〜 ロンドン「Cloud Expo Europe」展示会とシトリックス


「ビッグデータとクラウド・ストレージ」 連載 第十回

イベント・企業編5: 
ロンドン「Cloud Expo Europe」展示会とシトリックス



ロンドンにおいて、2013年1月29~30日にかけて「Cloud Expo Europe」が開催された。私は行かなかったが、クラウディアンはこの展示会に出展したので、同社ジョルジオ・プロペルシ氏(General Manager, Americas and EMEA)にロンドンでのエキスポとクラウド業界の様子を聞いてみた。


◆ クラウドは世界的現象


昨年秋にはシリコンバレーでも「クラウド・エキスポ」が開催され、ここではオープンソースが展示の多くを占めていたことを、本連載第五回で報告した。その中でも、特にオープンスタック陣営が多かったように思えたので、ロンドンではどうだったのか興味があったが、ジョルジオは少々違う印象をもっていた。

ジョルジオ: シリコンバレーでもロンドンでも、特にオープンスタック寄りということはなくて、両方とも中立的立場だったと思います。確かに、オープンスタック・ファウンデーションや、ラックスペースなどのオープンスタック系企業は多かったですが、クラウドスタックなど他のタイプのクラウドをサポートする企業も多くいました。

それより、去年に比べてロンドンの展示会がものすごく大きくなっていたのに驚きました。2012年は規模も小さく、ホスティングが話題の中心でした。今年はようやく、実際に「クラウド」中心になり、出展企業はクラウド・コンピューティング、クラウドストレージなどや、クラウドの周辺技術(クラウドをどう管理するか、クラウドの中で起こっていることをどう監視するか、どうやってクラウドをデバグするか、など)を展示していました。フロアは満員で、主催者側では5000人の参加者を見込んでいたようですが、それよりもずっと多かったと思います。

いったん会場の中にはいってしまうと、たくさんのアメリカの会社やNTTなどがブースを出していて、アメリカの展示会と見分けがつきません。確かに欧州の会社もありましたが、シリコンバレーでも欧州系企業がいましたし、出展者の国籍バランスはだいたい同じでした。ブースを見に来るお客様も、似たようなタイプの企業ユーザーで、ただ欧州やアジア(英BTやインドのタタ・コミュニケーションズなど)が多いという地理的な違いだけです。また、欧州の小さいサービスプロバイダーなどもけっこう来ていましたよ。

「CloudExpo Europe」におけるCloudian Inc.のGiorgio(写真右)とJimmy(写真左)


◆ クラウドスタックとシトリックス


クラウドスタックは、もう一つのIaaSのオープンソース・ソフトウェアである。クラウドスタックはCloud.comが開発し、同社は2011年にシトリックスが買収した。Cloud.comもシトリックスもかつてはオープンスタックのメンバーだったが、買収後シトリックスは2012年にクラウドスタックをリリースしてApache Software Foundationに寄付し、オープンスタックを離れるという決断をした。少々ややこしいが、なにしろクラウドスタックは現在オープンスタックとは別のオープンソース・プロジェクトになっている。Joe OnisickによるNetwork Computingの記事では、クラウドスタックのほうが企業向けに使いやすくパッケージされており、オープンスタックはもっとフレームワーク的だが強力なサポーターがいる、といった違いを述べている。

ジョルジオ: クラウディアンはオープンスタックにもクラウドスタックにも対応しています。この二つの違いを簡単に述べるのは難しく、それぞれの長所・短所などを比較した技術資料を参照していただきたいです。

実際にはお客様は、まったく別の理由からどちらかを選ぶことが多いですね。もし私が企業やサービスプロバイダーで、システムをクラウドに移したいと思ったとすると、実績があってきちんとサポートが得られるソリューションを選びたいと思います。オープンソース・コードを自分で直接使うと、社内のエンジニアをたくさん張り付け、自分でサポートもやらなければなりません。多くの企業ではとてもそこまでできません。

銀行ならば、それよりも本来業務である銀行業務にお金と人を割きたいはずです。ですから、すでにつきあいのある信頼のおける技術ベンダーにクラウドもやってほしいと考えます。どのオープンソース・ソフトウェアをベースに使っているかよりも、自社の既存システムに合っていて、価格が適正であることのほうが重要なのです。

それに、オープンソースだけがクラウドの技術ではありません。マイクロソフトやVMwareなども独自のソリューションを持っています。シトリックスは商用サービスとして、クラウドスタック・ベースのCloud Platformを提供しています。

◆ STaaS とセカンダリー・ストレージ


シトリックスのCloud Platformはこのように、企業ユーザー向けのフル・サポートのプラットフォームだが、現在同社はストレージ部分を持っていない。このため、クラウディアンがそこを受け持っている。

ジョルジオ: シトリックスのCloud Platform上では、クラウディアンを使って、二つの機能を実現できます。一つはS3対応のSTaaS (Storage as a Service)です。STaaSとは、クラウド上にストレージを置き、ストレージをサービスとして提供することです。

ハイブリッド・クラウドという考え方が広まっていますよね。自社のストレージのうち、一部をアマゾンのパブリック・クラウドに、一部を自社のプライベート・クラウドに、というやり方です。このとき、どのファイルをどちらに置くかころころ気が変わっても、両方ともインターフェースが同じならばユーザー側は大変使いやすくなります。このように、S3との互換性はユーザーにとってたいへん便利です。

もう一つはセカンダリー・ストレージのクラウド化です。プライマリー・ストレージは、例えばスプレッドシートをクラウド上に置いて直接開いて使うように、高速でのアクセスが必要な場合で、これに対してセカンダリー・ストレージは、直接アクセスすることの少ない、スナップショット、テンプレート、ISO、VMなどのストレージです。

これをクラウド化すると、Cloud Platformベースのクラウドのすべてのゾーンで、これらの要素にアクセスすることができます。クラウド化されていない場合、通常はローカルのNASに保存しますが、そうするとそのNASのあるゾーンが落ちた場合に、他のゾーンからスナップショットやVMなどが見えなくなってしまいます。ロンドンのエキスポでも、ブース来訪者はこのようなクリティカルなセカンダリー・ストレージがいつも見えるようになっていることの重要性を理解して、この点はとても興味を持たれました。

◆ ビッグデータでもクラウド・ストレージでもなく


さて、私のこのコラムは「ビッグデータとクラウド・ストレージ」と題しているが、ジョルジオはこれらの用語ではなく、「オブジェクト・ストレージ」という用語をなるべく使いたいという。

ジョルジオ: 我々のプロダクトは、最新最高のオブジェクト・ストレージであると言いたいです。

「ビッグデータ」という用語は誤解を招きやすいと思うからです。オブジェクト・ストレージを使う動機は必ずしもデータの規模ではありません。多くの企業が、最初は例えば5-10テラバイトといった、それほど巨大でもない規模でオブジェクト・ストレージを使います。それは、コスト・効率・スケーラビリティの3つの点ですぐれていて、後で「ビッグ」になっても大丈夫だからです。

そして、オブジェクト・ストレージはクラウドに適しています。自社ですべての機器を買い揃えて管理者を雇う必要がないクラウドは多くの企業のニーズに合っています。

◆ シトリックスとクラウディアンのパートナーシップ


では、顧客がシトリックスのオブジェクト・ストレージを選ぶ場合にどんなポイントがあるだろうか?

ジョルジオ: シトリックスにはわが社以外にもいくつかパートナーがいますが、クラウディアンは「S3との互換性」と「複数のデータセンターのサポート」という点が特徴です。

複数データセンターのサポートは簡単ではありません。我々の最初の欧州でのパートナー、Lunacloudの場合、すでにポルトガルにデータセンターがあり、これにフランスを加えることになっていたので、この点が決め手となってクラウディアンを選びました。クラウディアンでは、データのレプリカをいくつ、どこに保存するかの設定を複数の中から選べます。競合ソリューションではできません。ちなみに、ロンドンのエキスポでは、シトリックスのオブジェクト・ストレージパートナーとしてはクラウディアンだけしか展示していませんでした。

また、ロンドンでは新たにCloud Portal Business Manager (CPBM)をシトリックスと共同で発表しました。ユーザーは、このポータルを使って、ウェブベースでクラウド・ストレージを増やしたり設定を変更したりすることができるようになりました。

□■□ お知らせ □■□
Cloudian(クラウディアン)は、2013年2月26日(水)、27日(木)、ホテルニューオータニ(東京・紀尾井町)にて開催のCloudDays2013春に出展します。詳細はこちらでご案内しています。お越しの際には、ぜひCloudianブースにお立寄ください。CloudianオリジナルMINTIAを先着順でプレゼント。


海部美知(かいふ・みち)

エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネ クストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新 技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。ブログ:Tech Mom from Silicon Valley。Twitter ID:@MichiKaifu。 著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)がある。