2012/12/28

2013年はクラウド化による「サーバー人vs.ストレージ人」に注目?


「ビッグデータとクラウド・ストレージ」 連載 第七回

トレンド編4: ストレージ業界「2012年の主要動向」より



エノテック・コンサルティング代表
海部美知


年の瀬ということで、ストレージ業界についての今年のまとめ記事があった。アメリカ人はなんでも「トップ10」にするのが大好きだが、ここでは10件にするために少々無理している様子もあるので、主な点だけを取り上げて、少々ご紹介する。ご興味のある方は、ぜひ元記事を参照していただきたい。

◆ 2012年の採点表


この記事はComputerworld誌のストレージ業界専門家、Chris Poelker氏のコラム。一年前に自身で書いた2012年の予測を自分で採点し、それぞれについて来年の動きを予測しているものだ。

非常におおまかに言えば、おなじみに「クラウド化」が大きな流れであり、それに対応するためのストレージ分野での個別動向が下記のようなところに表れていると見ることができる。

1. 「組み込み型ストレージ」の躍進


この点はおそらく同氏が最近最も強く感じていることのようで、この一つ前の記事でも詳しく言及しており、2012年の予測が「ばっちり当たった」と述べている。

Poelker氏の言う組み込み型(Embedded)ストレージとは、サーバーとストレージをそれぞれ別に購入してSANを構築するのではなく、両方を組み合わせたモジュール型クラウド・パッケージにしたもののことである。これは、企業が自前のIT部門でストレージを運営するというスタイルから、パブリックやプライベートのクラウドにサーバーもストレージも置くというスタイルへの移行が背景となっている。

従来、米国の企業ITシステムでは、サーバーとストレージは別々に購入し、サーバー担当とストレージ担当が異なる人で予算も別々、というケースが多かった。しかし、クラウド化が本格化した2009年頃から、データセンターにストレージもサーバーもデータベースもすべて置くようになり、その統合インフラ化でコスト削減を目指す動きが出てきた。そこで、データセンター・インフラストラクチャ・マネージメント(DCIM)ソリューションが注目されるようになった。

特に大企業ユーザーの場合、カスタマイズするにしても、両方を個別に購入して専用担当者を置くコストや運用の複雑さに比べ、パッケージのレファレンス・アーキテクチャを使って構築するほうが、メリットが大きいと考えられるようになってきている。

Poelker氏は、2013年もこの傾向がさらに続くと予測する。小さめの組織では、引き続きサーバーとストレージを別のベンダーから購入するであろうが、全体の傾向としてはモジュール型への移行が続くと見る。この趨勢は、下記のいくつかの動きとも強く関連している。

2. ストレージ仮想化の進展


サーバーの仮想化に比べ、ストレージの仮想化はまだそれほど進まなかたっということで、この点については同氏は「やや時期尚早だった」と自ら評している。しかし今後の趨勢としては、「SANからクラウド/オブジェクト・ストレージ」「モバイルのクラウド化」の流れは止まらない。モバイルでは、端末のストレージ容量が小さいためにクラウド側にストレージを置く傾向がより強く、「ストレージをアプリケーションの近くに持っていく」目的のためには、マルチベンダーのデータセンターの中では、ストレージでも仮想化が進行すると予測される。

ストレージ仮想化では、まだ強力なリーダー的存在のベンダーが定まっていないため、今後どこがそのポジションを取るか、2013年に気をつけておく必要がありそうだ。

3. ファイバーチャネルの落日


ファイバーチャネル・ベースのSANは過去のものとなる、というPoelker氏の予測については、これも「時期尚早」との自己評価だ。しかしこちらも、徐々にIPベースのクラウド・ストレージへの移行が進んでいくだろうと予測している。

前述のパッケージシステム化の流れの中で、ストレージ・ベンダーとネットワークやサーバーのベンダーと提携する動きが多くなり、最近ではストレージを直接ブレードサーバーに接続できるようにし、SANを不要にした製品も出てきている。

4. ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の普及


この予測は大当たりとの自己評価。SSDのコストが下がりサイズが小さくなるにつれ、アクセス頻度の高い上位階層のストレージはSSDとなっていき、メカニカルなハードディスクは、よりアクセス頻度の低いアーカイブ向け階層に利用されるようになっていくと予測され、2013年もこの傾向が続くだろう。

しかし、最も下の階層においては、テープはしぶとく生き続けるという2012年予測も「大当たり」であった。蓄積データ量がどんどん増加し、コンプライアンスのための保存義務も増加する中で、テープは今後まだまだ利用されると見られる。

ストレージ形態の選択肢が増えて、どの目的にどういったストレージを利用するかの戦略がより多彩になる、と考えることができるだろう。


◆ さて、2013年の展望は?


全体として、クラウド化への対応というトップの動きから玉突きのようにいろいろな動きが起こっていることになる。モバイルのクラウド化、ビッグデータの進化、SSDの価格低下など種々の傾向から見て、こうした大きな趨勢は2013年にはますます加速することはあっても、ストップする様子は見えない。

Poelker氏によると、サーバーとストレージの統合運用という動乱の中で、「サーバー人」と「ストレージ人」の勢力争いでどちらが勝つのかは予測がつかないが、運用担当者としてはとにかく「いつも腕を磨いて最新のスキルを身につけておくのが得策」だという。レファレンス・アーキテクチャや統合パッケージによって、データセンター構築はよりシンプルになるかもしれないが、新しい統合運用環境の中では予想外の問題が起こりかねない。データ量やアプリケーションがどんどん増加していくことも間違いないので、「新しい動きに頑張ってついていくべき」という点については、おそらく誰も異論がないだろう。

ということで、ますますデータがビッグになっていく2013年に向け、引き続きこのコラムをどうぞ宜しくお願いいたします。


海部美知(かいふ・みち)


エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネ クストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新 技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。ブログ:Tech Mom from Silicon Valley。Twitter ID:@MichiKaifu。 著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)がある。

2012/12/23

Cloudian(クラウディアン)2012年の振り返り


2012年、残りもあとわずかです。

先週のクラウディアンは、グローバルチームが日本に集まり2日間にわたり様々な議論をしました。
その際、2012年の振り返りの資料を作成しましたのでご紹介します。

こうして振り返ってみると、本当にいろいろなことがありました。
都度、このブログ、Facebook、Twitter等でお知らせしてきました。
多くの方にこのブログにもアクセスしていただきました。

Cloudian(クラウディアン)に関心、興味を持っていただき、ありがとうございます。
関係者一同、心から御礼申し上げます。




2012/12/22

クラウド・オブジェクトストレージの「今」:ビデオインタビュー

この数ヶ月の間に、東京×2、大阪、福岡の4回に亘り、デル様が中心となり運営しているOSCA(TM)(Open Standard Cloud Association)主催のセミナー・イベントにて、クリエーションライン様とともにCloudian(クラウディアン)について紹介する機会がありました。


いずれの回も好評とのことで、そのご縁からDellテックセンターブログにて開始した「クラウド・トレンド・トーク powered by OSCA」の記念すべき第1回として、「クラウド・オブジェクトストレージの「今」をテーマとしたビデオインタビューが行われました。今後、クラウドの代表的な企業へのインタビューの連載を計画しているとのことです。

ブログでは、「特に Cloudian は既に国内大手プロバイダで採用されているということからも、風格のようなものを感じました。」といったインタビューの感想もご紹介いただいています。ぜひご覧ください。⇨こちら

ビデオインタビューは、約5分間×4本の約20分です。ここではインタビューのサマリーを簡単に紹介しておきます。

OSCA クラウド・トレンド・トーク 第1回 (1/4)
現在のオブジェクトストレージストレージの市場動向、お客様の関心や検討状況についてお話しています。技術が成熟し、お客様側での理解も深まると同時に、ニフティ様やNTTコム様での商用事例が後押しとなり、企業での活用における引き合いが増えて来ていると紹介しました。




OSCA クラウド・トレンド・トーク 第1回 (2/4)
なぜ、クラウド・オブジェクトストレージに注目が集まり始めたかについてお話しています。クラウドやビッグデータに向う大きな業界の流れがその背景にあります。オブジェクトストレージは大量のデータを取り扱ったり、複数データセンターでDRに備えるクラウド的な環境に最適な技術であると紹介しています。




OSCA クラウド・トレンド・トーク 第1回 (3/4)
Amazon S3に互換するメリットについてお話しています。情報が多く、経験が共有されていることから検証、導入、運用がスムースに行えること、S3エコシステムと呼ばれるようにS3を使用したアプリケーションやツールがすでにたくさんあることから、パブリックとプライベートで同じアプリケーションでハイブリッドで利用できるといった利点があると説明しています。




OSCA クラウド・トレンド・トーク 第1回 (4/4)
今後、企業でストレージを導入する際に検討すべきことについてお話しています。従来は、基幹系システムと同じストレージベンダーをデータのバックアップにも使わざるを得ないというハードウェアベンダー・ロックインとう状況がおこりがちでした。しかし、バックアップには、より容量単価の安い拡張性の高いストレージを求める傾向があり、今後はパブリッククラウドとプライベートクラウドのストレージと組み合わせて利用することが増えてくるだろうと説明しています。




インタビューのさいごは、オブジェクトストレージは、以前からコンセプトはありましたが具体的なイメージが湧きにくかったものの、Cloudian(クラウディアン)のような製品が登場し注目を集め、大手事業者での採用事例が続くことで、本格的に普及する時代を迎えるだろうと、インタビューをリードしていただいたデル社、布谷様のまとめによりインタビューは締めくくられています。さらに同社、小泉様に撮影編集いただきこのようなビデオインタビューが公開されることになりました。

私たちが知る限りでは、このようにベンダー同士で対談するという企画はたいへんに珍しく、ユニークでかつ面白い試みだと思います。企業のIT部門、クラウドサービス企画部門、R&D部門などでの導入検討の際の参考にでもなればたいへんにうれしいです。




2012/12/11

「Cloudianセミナー2012」レポート(後半)




セミナーの後半冒頭、リバーベッドのTim様よりリバーベッド社の概要について紹介がありました。同社はWAN最適化の分野で世界的に圧倒的なシェアを占めているとのことです。これに続き、寺前様より「リバーベッド・ホワイトウォーター」について説明がありました。企業内のファイルシステムとクラウド間にホワイトウォーターをゲートウェイとして設置することで、企業ITシステムのバックアップ・アーカイブにパブリッククラウドを利用できるようになります。これにより、従来はデータのバックアップを最終的に磁気テープとしてデータセンターに保管するか、バックアップ用のストレージ装置のディスクに保管していたものが、ストレージ単価の安いクラウドに安全に保管できるようになります。そして、ホワイトウォーターにはインターネット経由を経由する際の安全性を保つ暗号化のほか、伝送効率を高めるための圧縮化など多彩な機能が備わっていると紹介がありました。



続いて、NTTコミュニケーションズの大野様より、「Bizホスティング Cloudn」として2012年6月にサービス開始したコンピューティング・サービスと、Cloudianを採用し同年10月にサービス開始したObject Storageの紹介がありました。業界最安値水準の料金は、0.1円単位でのコスト削減と、大規模に展開する計画に基づき実現したとのことです。さらに、ベンダーロックインを避けるため、ハードウェアのストレージ製品を使うことは当初より対象外としていました。ソフトウェア製品であるCloudian採用の決め手は、Amazon S3に対する互換性の高さ、課金・統計などの機能が予めパッケージされ、豊富な商用実績があり他製品に比べ速く商用化できるという点にあったと説明がありました。さいごに、簡単に利用できることについてデモによる紹介がありました。(なお、当日のプレゼンは、preziで画面がぐるぐる回っていました。)


セミナーのさいごには、クララオンラインのギベス様から、企業がオブジェクトストレージに移行するには、まだハードルが高いという見解が示されました。この課題を解決するため、本年12月に発売の「Storagebox」というクラウド・ゲートウェイ装置をクララオンラインが複数関係者を取りまとめて開発。この装置を設置することで、企業は、API(Application Programming Interface)を意識することなく、Cloudianを採用するクラウドストレージサービスを社内共有ファイルサーバーであるかのように利用できます。この「Storagebox」はB-Plats様より近く販売開始されるとのことです。


約3時間に亘る「Cloudianセミナー2012」は、クラウディアンのMike Tsoが締めくくりました。


最後のスライドには、感謝の言葉とともに「Cloudian "S3 in the box"」。

本日の講演者のいずれのお話からも、今後、企業においても従来の専用ストレージ装置にに加え、パブリッククラウドとプライベートクラウドをハイブリッドに利用し、いわゆるビッグデータ化するデータのストレージを始めるであろうと予感させるものでした。企業においても簡単に利用できる「S3機能の箱詰」、これが来年のクラウディアンのテーマです。

「Cloudianセミナー2012」 レポート(前半)


2012年12月10日(月)、100名を越える出席者を迎え、Cloudian(クラウディアン)の活用事例を紹介する「Cloudianセミナー2012」を開催しました。

セミナーでは、Cloudianを採用しクラウドストレージサービスを提供する、ニフティ様(「ニフティクラウドストレージ」)と、NTTコミュニケーションズ様(「Bizホスティング Cloudn(クラウド・エヌ)、Object Storage」)から、サービスの紹介に加え、Cloudian採用の経緯などについて説明がありました。

また、グローバルで製品展開しているエンタープライズ向けクラウド製品である、「Oxygen Cloud」について日商エレクトロニクス様から、「リバーベッド・ホワイトウォーター」についてリバーベッド様から、さらに、手軽に企業内システムからクラウドを利用できる「StorageBox」を使ったファイルシステム構築についてクララオンライン様から紹介がありました。

当日の模様は、以下のBCN Bizlineのほか、Yahoo!ニュース朝日デジタルSearchinaにも記事掲載されていますので、ぜひご覧ください。

クラウディアン、クラウドストレージのセミナーを開催


さて、セミナーはクラウディアン株式会社の太田のご挨拶からはじまりました。スマートフォンなどの普及に伴い、業務において個人デバイスを利用するBYOD(Bring Your Own Device)が加速しています。企業のIT担当部門は、外部に重要なデータが流出するリスクを管理するため、デバイスだけではなく、自社でプライベートクラウドを構築し管理することも重要になります。この大きなトレンドについて、BYOND(Bring Your Own ”Network” and Device)という造語を使い説明しました。


講演者のトップとなるニフティの小池様からは、ニフティクラウドストレージの紹介の後、お客様からの要望の多かったS3互換のクラウドストレージの自社開発を計画していたところCloudianに出会い、2カ月という短い期間で商用開始に至ったと、採用経緯を丁寧に説明いただきました。また、ニフティクラウドストレージは性能面でアマゾン東京リージョンとほとんど差が無いという試験結果も披露いただきました。さいごには、クラウドでは規模が重要であることから、(Cloudianを核として)「事業者が連携したクラウド連合を実現したい」との提言がありました。


次に、日商エレクトロニクスの藤井様からは、すでに世界の企業8000社で利用されているOxygen Cloudの紹介がありました。Oxygen Cloudは、いわゆるオンラインストレージ、ファイル共有のためのアプリケーションです。日本ではパブリッククラウドとして利用する場合にはニフティクラウドストレージを利用することができます。一方、企業内に限定して利用する場合には、Cloudianを使ったプライベートクラウドのアプリケーションとして利用することができます。同社の飯田様より、Oxygen Cloudのデモがあり、わかりやすく機能全般を知ることができました。



2012/12/08

AWSを使ったオバマのケチケチ「マネーボール」作戦を企業も活用へ


「ビッグデータとクラウド・ストレージ」 連載 第六回
トレンド編3: オバマの「マネーボール」作戦とAWS



エノテック・コンサルティング代表
海部美知


◆ 大統領選を制したビッグデータ


11月のアメリカ大統領選では、民主党オバマ大統領側がITとネットによる情報収集力をフル活用し、接戦と伝えられた選挙戦を制する原動力となったともっぱらの評判だ。

2008年の選挙の時は、どちらかというと「有権者にリーチする新しい手段」として、フェースブック・ツイッター・ユーチューブ・スマートフォンなどを、「情報を配信する線」として活用することが中心だった。これに対し、今回の選挙ではソーシャルによる情報配信はもはや当たり前で、それよりも「情報収集・解析・予測・絞り込み」、つまり「線」ではなく「脳」の部分にビッグデータ手法を活用し、もっと高度な使い方をした。

・資金集め: 過去の支持者データベースや外部データを活用し、寄付する可能性の高い人のリストを作り、寄付を呼びかけたり、対象の年令・性別・土地柄に合わせて資金集めパーティの目玉セレブを選択し、カリフォルニアではジョージ・クルーニーを招いて大成功を収めたなどが知られる。

・投票の呼びかけ: 膨大なシミュレーションに基づき、それぞれのターゲットに合わせた発信者と内容のメッセージが送られた。たまたま私の手元には、ミシェル・オバマ夫人から「投票に行きましょう」というツイッターのダイレクトメッセージ が届いた。ちなみに対抗するロムニー候補からは、2500ドルの寄付を依頼する紙の手紙が来た。ロムニー氏の場合は、おそらく、大学の名簿から私の名前と住所を引っ張ったと思われるが、この対照に思わず笑ってしまった。

・テレビCMや遊説: 伝統的な選挙運動についても、どの場所でどのような演説をするか、支持してくれそうな視聴者層にリーチするにはどの番組にどんな広告を出すか、といったことも細かくデータ解析ではじき出した。

◆ ケチケチ勝つ「マネーボール」作戦を支えたAWS


こうした戦法は、「データ解析を駆使して小が大に勝つ」の代名詞となった例の映画にちなんで「マネーボール」作戦ともよばれる。

ARS Technicas誌記事によると、人件費まで含めたキャンペーン中のITへの支出額は、オバマ陣営はロムニー陣営の2/3に過ぎなかったという。オバマ陣営は、前回の選挙以来バラバラだった数多くの支持者リストを統合し、外部のデータも活用し、膨大なデータを扱い膨大な回数の演算をしながらも、無料のオープンソース・ソフトを徹底的に使い倒してコストは最小限に抑えた。

そんなケチケチ作戦を支えたインフラが、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)だった。チームがつくったソフトウェアは99.99%AWSでホストされ、コストを下げサーバー管理の手間を省いた。アマゾンにホストされたアプリケーションの数は200以上、しかしアマゾンへの支払額は$257,287.97で、大規模な運用の割に少ない。(キャンペーン中の経費明細が記事の中で詳細に公開されている。)そして、選挙の直前にトラフィックが極端に上がり、終わったらほとんどを撤去するという使い方にAWSは最適、というよりAWSがなければほぼ不可能とすら言えるだろう。

AWSに関するブログでは、キャンペーン中に支援依頼の電話をかけるための管理ツールの例が示されている。同時に利用するユーザー数は7000人、投票日直前に電話件数が急激に増え、最後の4日間だけで200万本の電話をかけたが、このためのツールがAWSでホストされた。この間突然データ量が増え、選挙が終わればゼロとなる。

S3(Simple Storage Service)は、さまざまなクラウド・サービスから成るAWSの一つの構成要素であり、サーバー障害に備えたバックアップにも利用された。ウェブサイトのスナップショットを定期的にとり、S3に保存しておいて、障害があれば最新のスナップショットにリダイレクトされる。投票日の前にハリケーン・サンディが東海岸を襲ったのは、ちょうどよい予行演習になったとのことだ。

◆ 企業にも活用されるAWS・S3


このように、アマゾンAWSおよびS3は、ウェブサービスだけでなく、政府や企業にも使われるようになっている。

オバマ選挙運動のビッグデータ・チームは、11月末に開催されたアマゾンの開発者会議re:Inventに登場した。私は参加できなかったが、見るからにナントカな人々である。

このre:Inventでの講演で、ポリシー・ベースのアーカイブサービスが紹介されている。企業の基幹系システムの場合、アクセス頻度の高い「Tier1」データは高速でアクセスできるSANに保存、その後一定の期間が過ぎるなど、なんらかのポリシーに基づき「Tier2」に移され、さらにその後ディスクやテープに落として倉庫に保管となる。高速アクセスのできるストレージほど高価だからだ。これが最近では、Tier2にS3を利用し、さらに数時間後に取り出せればよいという、ディスク・テープの代わりとなるGlacierというサービスも提供されている。

re: Inventは今回が初回であったが、ZDNetによると、参加者6000人という盛況だったようだ。この会議での報告によると、現在AWSは190地域に数千の顧客を持ち、S3のオブジェクト数は今年6月の1兆個からすでに1.3兆個に達し、一秒あたり83.5万件のリクエストを処理し、370万のクラスタを持つという。2011年に81件であった新サービス・機能は2012年では158件に増加、一日に50億ドル級の世界企業一社分の容量を増やし続けている。

一方で、今年にはいってすでに23回の値下げをしてきたが、今回24回目の値下げを発表した。グーグルとの競争などがその背景にある。

こうしたパワーに支えられ、S3は高い堅牢性と無制限の容量を提供し、政府や企業のITシステムにも浸透しつつある。従来、企業の基幹システムでは、安全性への懸念などから、クラウドの利用は必ずしも進んでいなかったが、最近は用途により、パブリック・クラウドやプライベート・クラウドを使い分けるメリットが認識されてきた。

オバマのマネーボール作戦のように、クラウドに適した用途にうまく安価なパブリック・クラウドを活用することで、企業のサーバーやストレージのコストを大幅に下げ、競争に勝ち抜き、より高いマージンを確保することが、今後ますます重要になっていくだろう。


海部美知(かいふ・みち)


エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネ クストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新 技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。ブログ:Tech Mom from Silicon Valley。Twitter ID:@MichiKaifu。 著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)がある。



お知らせ:「Cloudianセミナー2012」満席につき登録終了いたしました。




本セミナーでは、Cloudianの活用事例をご紹介します。日本を代表するクラウドサービス事業者であるニフティ、NTTコミュニケーションズのクラウド・オブジェクトストレージサービスにおける事例、グローバルに事業展開する「Oxygen Cloud」、「リバーベッド・ホワイトウォーター」におけるCloudian活用事例に加え、クララオンラインがCloudianとクラウド・ゲートウェイを使った社内ファイルシステムをデモを交えて紹介します。



2012/12/04

Cloudian(クラウディアン)のプレゼン資料@Cassandra Conference

2012年11月29日(木)、東京にて開催されたCassandra Conference 2012 in TokyoにおけるCloudian(クラウディアン)のプレゼンテーション資料を紹介します。

当日には、本年5月に発売以来Amazonのデータベース入門書部門で半年間に亘り1位を続けた「NOSQLの基礎知識(ビッグデータを活かすデータベース技術)」の著者の一人が、同書に掲載した複数のNOSQLデータベースの性能比較結果についても説明をしました。

また、Cassandraの採用理由だけではなく、大きなオブジェクト処理やディスク利用効率における課題を解決するために独自開発したHyperStoreについても紹介しています。


2012/12/03

CCE(Cloudian Certified Engineer)資格者が50名を越えました

2012年11月26日、27日、S3互換クラウドストレージを構築できるパッケージソフトウェア製品、Cloudian(クラウディアン)の技術トレーニングを開催しました。このたびは、既存のCloudianパートナー企業からに加え、新たにCloudianのパートナーへの参加準備をしている企業と、プライベートクラウドにCloudianを利用することを検討している企業のエンジニアに参加いただきました。2日間に亘るトレーニングを無事終了し、参加者全員が終了後の試験に合格。この結果、CCE(Cloudian Certified Engineer)は、新たに7名が加わり、全員で52名となりました。

CCE資格者には以下のような証明書が授与されています。


Cloudianはニフティ、NTTコミュニケーションズといった日本を代表するクラウド事業者のクラウドストレージサービスに採用されていますが、汎用サーバーをハードウェアとして使い、低コストでオブジェクトストレージが構築できるため、プライベートクラウドや企業向けのストレージとして利用されることが増えてゆくと見ています。

CCEは、Cloudianを販売し技術サポートを提供するCloudianパートナーが必ず取得する資格ですが、今後はCloudianパートナー企業に留まらず、一般のユーザーのお客様でもCCEを取得するエンジニアが増えてゆくであろうと期待しているところです。